「広告を使いこなして何でも売れるようになる」。僕のロードマップ第1段階の話をすると、「で、何から練習するん?」とよく聞かれる。
教科書的にはブログや広告運用なんやけど、実はもっと身近で、無料で、今日からできる練習を見つけてしまった。「友達に店を薦める」である。ふざけているようで、これがマーケティングの練習として本当によくできているという話を書く。
「売る」の最小単位は「薦める」
売るという行為を分解すると、核にあるのは「相手に合う価値を見つけて、伝えて、行動してもらう」ことだ。金銭のやり取りは、実は本質やない。
そう考えると、友達に店を薦めて実際に行ってもらうのは、報酬ゼロなだけで構造は完全に営業である。相手のニーズを聞き、手持ちの選択肢から合うものを選び、魅力が伝わる言葉で提案し、行動まで持っていく。全工程が入っている。
しかも結果がすぐ分かる。行ってくれたか、喜んでくれたか、リピートしたか。数字ならぬ生の反応が返ってくる。
実験台になってくれた後輩の話
先日、職場の後輩に「彼女の誕生日に使う店を探してる」と相談された。僕の営業魂に火がついた瞬間である。
まずヒアリング。予算、彼女さんの好み、雰囲気の希望、駅からの距離。聞いてみると「静かで落ち着いた店」ではなく「二人ともよく喋るので、賑やかすぎず沈黙もしない店」が正解らしいと分かった。この時点で、僕が最初に思い浮かべていた店は候補から消えた。
提案したのは、カウンター越しに大将が程よく話しかけてくれる、例の行きつけの寿司割烹だ。「会話が途切れても大将が拾ってくれるから、気まずくならへんで」と伝えたら、そこが決め手になったらしい。
後日、後輩は満面の笑みで報告してくれた。誕生日は大成功で、しかも二人でまた行ったという。初成約、リピートまで付いた。
学び1: 売るとは聞くことだった
この一件で一番学んだのは、提案の質はヒアリングの質で決まるということだ。
僕は最初、自分が一番うまいと思う店を薦めようとしていた。でも正解は「僕の一番」やなくて「相手の状況の一番」だった。聞かずに薦めるのは、営業やなくて押し売りである。
マーケの教科書に「顧客理解が9割」と書いてある意味が、店薦め一回で腹落ちした。教科書を10回読むより効いた。
学び2: 引き出しという在庫が要る
もう一つ痛感したのは、提案には在庫が要るということ。僕が即座に複数の候補を出せたのは、普段から店を開拓して行きつけを育てているおかげだ。
どんなに聞き上手でも、引き出しが空なら提案できない。逆に引き出しが多ければ、ニーズの細かい差に合わせて出し分けられる。仕入れなき営業は成立しない。遊びに見える店開拓が、ちゃんと仕入れになっていた。
学び3: 惚れてないものは薦められない
最後の学びは感情の話。僕があの寿司割烹を薦めるとき、言葉に熱がこもるのが自分でも分かった。本気でいい店やと思っているからだ。
将来のカフェバーを「自分が面白いと思ったものを置くアンテナショップにしたい」と構想の記事で書いたのは、まさにこれで、僕は自分が惚れてないものを売れる気がしない。逆に、惚れているものなら喜んで売れる。自分の「売る力」はこのタイプやと分かったのは、大きな収穫だった。
まとめ
要点は3つ。
- 「友達に店を薦める」は、ヒアリングから成約まで揃った0円の営業練習
- 提案の質はヒアリングで決まる。自分の一番やなく、相手の一番を出す
- 引き出しの仕入れと、対象への惚れ込みが売る力の土台になる
今度誰かに「どっかええ店ない?」と聞かれたら、チャンスだ。まず質問から返してみてほしい。それ、もう営業研修やから。