数年前、初めて新人のトレーナー役を任された。教わる側から教える側へ。この立場の変化は、6年間のエンジニア生活の中でも指折りの学びやった。
ただし最初は、盛大に失敗した。この記事では、その失敗と、そこから決めた3つのルール、そして「教えることは二度学ぶこと」という結論について書く。後輩を持ったばかりの人に届いたら嬉しい。
答えの自動販売機になった
トレーナーになりたての僕は、張り切っていた。後輩に聞かれたことには全部、即座に、丁寧に答えた。我ながら親切なええ先輩やと思っていた。
数週間して気づいた。後輩が、自分で調べる前に僕に聞くようになっていた。当然だ。僕という自動販売機は、ボタンを押せば数秒で正解が出てくる。調べるより速いに決まっている。
親切のつもりで、僕は後輩から「考える機会」を奪っていたのだ。教え方を変える必要があった。
ルール1: 答えやなく、たどり着き方を渡す
それから僕は、質問に質問で返すようになった。「どこまで調べた?」「エラーメッセージはなんて言うてる?」「仮説ある?」。
意地悪をしているのではない。答えそのものより、答えへのたどり着き方のほうが、後輩の残りの40年で使える資産だからだ。魚をあげるより釣り方、というやつである。
ただし納期が迫っている時は普通に答える。教育は大事やけど、後輩を実験台にして炎上させたら本末転倒だ。平時は釣り方、有事は魚。この使い分けだけは意識している。
ルール2: 質問の入り口は全開にしておく
質問に質問で返すスタイルには、副作用のリスクがある。「聞きにくい先輩」になることだ。これは絶対に避けたかった。
だから僕は、質問のハードルを下げる仕込みとセットでやっている。具体的には、15分悩んだら聞きに来るルールを最初に渡す。自分の失敗談を先にさらけ出す。聞かれたら、どんなに初歩的な内容でも「ええ質問やね」から入る。
抱え込みが一番あかんという話は頼る技術の記事に書いたとおりで、あの記事の内容はほぼ、後輩に渡している処方箋そのままである。考えさせるけど、孤立はさせない。この両立が肝だ。
ルール3: 教わる側にも回る
三つ目のルールは、後輩から教わることだ。これは謙遜やなくて実利である。
後輩は僕より新しい世代のツールや文化に詳しい。実際、いま使っている便利ツールのいくつかは後輩に教わったものだ。「それ知らんわ、教えて」を先輩側から言えるチームは、情報が双方向に流れる。
それに、教わり上手な先輩の下では、後輩も質問しやすくなる。教える・教わるが一方通行やなくなった時、指導は共同作業に変わる。
教えることは二度学ぶこと
トレーナーを経験して一番驚いたのは、教える側の僕の理解が深まったことだ。
人に説明しようとすると、自分の理解の穴が露呈する。「なんとなく分かっていること」は説明できない。後輩の「なんでですか?」に詰まるたび、僕は自分の知識を掘り直した。教材を作るのは僕やのに、一番勉強していたのも僕やった。
このブログで学びを記事にしているのも、根っこは同じだ。アウトプットは、最強のインプットである。
まとめ
要点は3つ。
- 即答は親切に見えて、考える機会を奪う。平時は釣り方、有事は魚
- 考えさせることと、質問しやすさは両立させる。15分ルールと失敗談の開示が効く
- 後輩からも教わる。双方向になった瞬間、指導は共同作業になる
これから後輩を持つ人へ。安心してほしい、一番成長するのはたぶんあなたのほうやから。